本卦・之卦・変爻は変化の流れを読むための基本
易経で卦を立てると、「本卦(ほんか)」「之卦(しか・ゆくか)」「変爻(へんこう)」という言葉が出てきます。漢字だけを見ると難しく感じますが、役割を整理すると仕組みは明快です。
- 本卦:いま置かれている状況の全体像
- 変爻:変化が生じようとしている爻
- 之卦:変爻が陰陽反転した後に現れる卦
本卦だけを読むのではなく、どの爻が動き、その結果どの卦へ移るのかを見ることで、「現在の状態」と「これから向かいやすい方向」をつなげて考えられます。
本卦とは現在の状況を表す卦
本卦は、占筮によって最初に得られた六爻の卦です。問いを立てた時点の状況、問題の構造、関係する人の立場、物事を包む大きな流れなどを示します。
ただし、本卦を「現在の事実をそのまま写した答え」と固定的に考える必要はありません。易経は、変化の兆しを含む「時」を読み取るものです。本卦には、すでに次の動きへつながる要素も含まれています。
本卦を読むときは、まず次の順序で全体像を確認します。
- 卦名と上卦・下卦の組み合わせ
- 卦が象徴する自然、性質、働き
- 卦辞が示す大きな方向性
- 問いの内容と卦の主題がどう重なるか
八卦が重なって64卦が生まれる仕組みは、易経の64卦とは?で確認できます。
変爻とは動き始めた陰陽のしるし
変爻は、六本の爻のうち変化する爻です。陽爻は陰爻へ、陰爻は陽爻へ変わります。変爻が示すのは、単なる吉凶ではなく、状況のどの部分が動き、どの段階で判断が必要になるかということです。
六爻には、下から初爻・二爻・三爻・四爻・五爻・上爻という位置があります。同じ本卦でも、初爻が変わる場合と上爻が変わる場合では、変化の段階が異なります。
| 位置 | 変化の見方 |
|---|---|
| 初爻 | 始まり、準備、まだ表面化していない動き |
| 二爻 | 基礎を整え、周囲との関係が生まれる段階 |
| 三爻 | 内側から外側へ進む境目、迷いや無理が出やすい段階 |
| 四爻 | 新しい環境や責任へ入る段階 |
| 五爻 | 中心的な立場、成熟した判断が求められる段階 |
| 上爻 | 完成、行き過ぎ、次の局面へ移る段階 |
爻の位置と九・六の意味は、易経の爻とは?で詳しく解説しています。
之卦とは変化後の方向を示す卦
之卦は、変爻の陰陽を反転させてできる卦です。「之く卦」、つまり本卦から向かっていく先の卦として捉えられます。
之卦は、未来を断定する予言ではありません。本卦の状況がそのまま進み、変爻が示す変化が起きた場合に、どのような局面へ向かいやすいかを考える手がかりです。
本卦が「現在地」なら、変爻は「曲がり角」、之卦は「その先に広がる風景」とたとえることができます。三つを関連づけることで、現在から次の段階へ移る流れが見えてきます。
本卦から之卦を作る方法
之卦を作る手順は次のとおりです。
- 本卦の六本の爻を下から順に確認する
- 変爻の位置を特定する
- 変爻が陽なら陰へ、陰なら陽へ反転させる
- 変わらない爻はそのまま残す
- できあがった上卦・下卦から之卦を確認する
たとえば、本卦が六本すべて陽爻の「乾為天」で、初爻だけが変爻の場合、最下段の陽爻が陰爻に変わります。その結果、下卦は乾から巽へ変わり、之卦は「天風姤」となります。
この場合、本卦・乾為天の強い創造力、初九「潜龍勿用」が示すまだ動く時ではない段階、そして之卦・天風姤が示す出会いや思いがけない接触を、一つの変化の流れとして読みます。
第1卦の全体像は、乾為天の解説も参考にしてください。
本卦・変爻・之卦を読む基本の順序
1.本卦で問題の全体像を確認する
最初に卦名、象意、卦辞を読みます。ここで「物事がどのような時にあるのか」をつかみます。
2.変爻で現在の段階と注意点を読む
変爻の爻辞を確認し、どこに変化が生じているのか、いま取るべき行動は何かを考えます。卦辞と爻辞の役割については、卦辞・爻辞の違いと読み方もご覧ください。
3.之卦で変化の先にある主題を見る
之卦の卦名、象意、卦辞を読みます。本卦と反対の意味だと決めつけず、「何が変わることで、どのような課題や可能性が現れるのか」を考えます。
4.三つを現実の行動へ結びつける
最後に、問いを仕事、人間関係、学び、健康などの現実に戻します。易経の言葉を抽象的なまま終わらせず、「今は待つ」「準備を整える」「人に相談する」など、実行できる判断に置き換えます。
変爻が複数ある場合はどう読むのか
占法によっては、変爻が一つだけでなく複数現れることがあります。この場合も、すべての変爻を反転させて之卦を作る点は同じです。
ただし、複数の爻辞をどのような優先順位で読むかは、用いる占法や流派によって異なります。変爻の数だけで機械的に一つの爻を選ぶ方法もあれば、本卦と之卦の関係、爻の位置、問いの内容を合わせて判断する方法もあります。
初心者は、まず次の三点を守ると混乱しにくくなります。
- 最初に本卦の主題を確認する
- 複数の爻辞に共通する注意や流れを探す
- 最後に之卦を見て、変化全体の方向をまとめる
自分が学ぶ講座やテキストの読み方を基準にし、途中で異なる方式を混ぜないことも大切です。
初心者が注意したい読み違い
之卦を確定した未来だと考える
之卦は、現在の条件が続いた場合の方向性です。行動や環境が変われば、その後の展開も変わります。未来を恐れるためではなく、今の選択を整えるために読みます。
之卦だけを見て本卦を軽視する
変化の出発点は本卦です。本卦の課題を理解せずに之卦だけを見ると、なぜその方向へ進むのかが分からなくなります。
変爻を吉凶だけで判断する
爻辞に厳しい言葉があっても、修正点を早く知ることができれば、行動を改める機会になります。吉にも条件があり、凶にも回避の知恵があります。
本卦は現在地、変爻は転機、之卦は向かう方向
本卦・変爻・之卦は、それぞれを別々に暗記するのではなく、一つの時間の流れとして読むことが大切です。
- 本卦で現在の状況を知る
- 変爻で動き始めた部分を知る
- 之卦で変化後の方向を考える
易経は未来を固定するものではありません。変化の兆しを読み、時に合った行動を自分で選ぶための知恵です。64卦を身近に確認したい方は、易経64卦カードもご活用ください。
本卦から之卦への読み方を体系的に学びたい方は、東京・オンライン対応の易経講座「易を学ぶ」をご覧ください。
