『古事記』の国生みを読んだ後、「次に生まれた神々は誰ですか」「なぜ家、海、風、木、山、食物、火の神が続くのでしょうか」と疑問を持つ方がいます。
伊耶那岐神と伊耶那美神は大八島などの国土を生んだ後、その国土で営まれる生活や自然に関わる神々を生みます。これが神生みです。
今回は、数多くの神名をただ暗記するのではなく、どのような領域の神々が、どの順番で現れるのかを『古事記』の流れに沿って整理します。
神生みは国生みの続き
『古事記』では、伊耶那岐神・伊耶那美神が島々を生んだ後、さらに神々を生みます。国土だけがあっても、そこに住居、水、風、木、山、野、食物、火がなければ、人の暮らしは成り立ちません。
神生みは、自然物や生活に必要な働きを神として語る物語です。ただし、これは神話上の記述であり、自然科学による日本列島や生活文化の成立説明とは区別して読んでください。
最初に生まれる大事忍男神
神生みの最初に現れるのが、大事忍男神(おおことおしおのかみ)です。國學院大學の神名データベースでは、伊耶那岐神・伊耶那美神の神生みによって生まれた神々の第一とされています。
神名の意味には複数の説があります。神生みという大事業を象徴する神とする見方がありますが、一つの解釈を原典そのものと断定しないことが大切です。
住居に関わる神々
続いて、石や土、家の入口、屋根、家屋に関わる神々が現れます。
- 石土毘古神(いわつちびこのかみ)
- 石巣比売神(いわすひめのかみ)
- 大戸日別神(おおとひわけのかみ)
- 天之吹男神(あめのふきおのかみ)
- 大屋毘古神(おおやびこのかみ)
- 風木津別之忍男神(かざもつわけのおしおのかみ)
原典では神名が続きますが、後世の注釈では石、土、戸、屋根、家屋といった住居形成の流れとして読まれています。ここは原文の神名と、後世の語義解釈を分けて理解します。
海と水の神々
次に海の神、大綿津見神(おおわたつみのかみ)が生まれます。そして水の出入口に関わる速秋津日子神(はやあきつひこのかみ)と速秋津比売神(はやあきつひめのかみ)が続きます。
その後、水面の泡、水の分配、水を汲む働きなど、水に関係する神々が語られます。『古事記』本文の「持別而生」を誰が生む主語と読むかは、注釈によって見解が分かれます。
したがって、系譜図を作るときも、すべてを単純に伊耶那岐神・伊耶那美神の直系の子として一本につなぐのではなく、原典の文法と諸説を示す必要があります。
風・木・山・野の神々
続いて、風、木、山、野に関わる神々が生まれます。
- 志那都比古神(しなつひこのかみ)―風の神
- 久久能智神(くくのちのかみ)―木の神
- 大山津見神(おおやまつみのかみ)―山の神
- 鹿屋野比売神(かやのひめのかみ)―野の神、別名・野椎神
さらに山と野に関わる神々から、霧、谷、迷いなど山野の状態を表す神々が語られます。山や野を一つの景色として見るのではなく、そこで起こる自然現象まで細かく神格化している点が特徴です。
船・食物・火の神へ
山野の神々の後には、鳥之石楠船神(とりのいわくすふねのかみ。別名・天鳥船)、食物に関わる大宜都比売神(おおげつひめのかみ)、そして火之夜芸速男神(ひのやぎはやおのかみ)が生まれます。
火之夜芸速男神には、火之炫毘古神、火之迦具土神という別名が記されます。火は食物を調理し、暮らしを支える一方、危険も伴います。火之迦具土神の誕生によって伊耶那美神は大きな傷を負い、物語は神避りと黄泉国へ進みます。
神生みの流れを表で確認する
| 段階 | 主な領域 | 代表する神 |
|---|---|---|
| 1 | 神生みの始まり | 大事忍男神 |
| 2 | 石・土・住居 | 石土毘古神、大屋毘古神など |
| 3 | 海・水の出入口 | 大綿津見神、速秋津日子神・速秋津比売神 |
| 4 | 水の働き | 水面、分配、水汲みに関わる神々 |
| 5 | 風・木・山・野 | 志那都比古神、久久能智神、大山津見神、鹿屋野比売神 |
| 6 | 山野の現象 | 霧、谷、迷いなどに関わる神々 |
| 7 | 船・食物・火 | 鳥之石楠船神、大宜都比売神、火之迦具土神 |
原典・後世の信仰・清家龍征の読みを分ける
原典の記述:伊耶那岐神・伊耶那美神が国生みの後、神名を連ねながら自然と生活に関わる神々を生む物語です。
後世の信仰:海、山、火、水などの神々は、各地の神社で御祭神として信仰されてきました。ただし、神社ごとの由緒や御神徳は公式情報で個別に確認する必要があります。
清家龍征としての読み:私は、神生みを「国土ができた後、暮らしに必要な働きが一つずつ整う物語」として読むと、神名の順序を理解しやすいと考えています。これは原典本文そのものではなく、学ぶための現代的な整理です。
国生みから続けて読む
前段の島々の順番は、古事記の国生みとは?大八島が生まれる順番で整理しています。
神世七代から国生みまでの全体像は、天地開闢から神世七代まで|総まとめをご覧ください。
古事記と神社を体系的に学びたい方へ
古事記・神社講座では、原典の物語、後世の信仰、神社の由緒を分けながら学びます。

