於母陀流神・阿夜訶志古泥神を調べると、「面足神」「惶根神」など異なる漢字に出会います。どれが間違いなのかと迷う方もいるでしょう。実は、参照している文献が違うために表記が異なる場合があります。
この記事では御利益や物語を重ねて説明するのではなく、『古事記』を読むときに迷いやすい神名の表記と読み方を整理します。
『古事記』では於母陀流神・阿夜訶志古泥神
國學院大學の古事記神名データベースは、小学館『新編日本古典文学全集 古事記』の漢文本文に表記を統一しています。そこでの見出しと現代仮名遣いの読みは次のとおりです。
- 於母陀流神(おもだるのかみ)
- 阿夜訶志古泥神(あやかしこねのかみ)
まずはこの二つを『古事記』の表記として覚えると、原典と後世資料を混同しにくくなります。
『日本書紀』では面足尊・惶根尊などの表記がある
國學院大學の資料によれば、『日本書紀』には於母陀流神に対応する名として面足尊、阿夜訶志古泥神に対応する名として惶根尊、吾屋惶根尊、忌橿城尊、青橿城根尊などが見られます。
これは単純な誤字ではなく、文献ごとの伝承や表記の違いです。神社の御祭神名で「面足神」と書かれていても、ただちに『古事記』と矛盾すると決めつけることはできません。どの文献・由緒に基づく表記かを確認することが大切です。
読みを確かめる三つの手順
1.参照している文献名を見る
『古事記』なのか『日本書紀』なのか、神社の由緒なのかを確認します。出典が変われば、漢字表記も変わることがあります。
2.大学や神社公式の資料で照合する
検索結果の短い説明だけで判断せず、國學院大學の神名データベースや神社公式サイト・神社庁の情報を開きます。読み仮名が明記されているかも確認してください。
3.表記の違いを消さずに記録する
ノートには「古事記表記」「日本書紀表記」「神社での表記」を分けて書きます。一つに統一してしまうより、違いを残したほうが後から資料の関係をたどれます。
「妹」は読みと関係を示す語
『古事記』では女神の前に「妹」が置かれます。これは「いも」と読み、対偶の女神であることを示します。現代語の妹と同じ意味だけに限定すると、神世七代の関係を読み違えやすくなります。夫婦とする説、兄妹とする説があり、一つに断定できない点も覚えておきましょう。
参拝前は神社ごとの由緒を確認する
同じ神様を祀る神社でも、御祭神名、由緒、信仰の伝わり方は同一ではありません。参拝先を探すときは、神名が似ているという理由だけで決めず、神社公式サイトまたは都道府県神社庁で御祭神と所在地を確認してください。私は、確認できない参拝体験を付け加えません。
第六代の意味はシリーズ本編で
神世七代第六代としての位置、神名に関する諸説、現代への問いは、於母陀流神・阿夜訶志古泥神とはでまとめています。前の代から順に読む方は、第五代の記事からお進みください。
於母陀流神と阿夜訶志古泥神には、全国の神社が共通して認める唯一の「本宮」が定められているわけではありません。一方、二柱を『日本書紀』系の面足尊・惶根尊として祀る第六天神社系では、東京都台東区蔵前の榊神社、通称「第六天榊神社」が総本宮として知られています。同社は古く「第六天神宮」と称され、現在は天神第六代坐榊皇大御神、面足尊、惶根尊を祀っています

清家龍征がかつて訪れていた第六天神社

