神世七代を一代ずつたどるシリーズは、第六代の於母陀流神・阿夜訶志古泥神に続き、いよいよ第七代へ進みます。今回取り上げるのは、伊邪那岐神(いざなきのかみ)と伊邪那美神(いざなみのかみ)です。
二柱は神世七代の最後に一組として現れ、ここから国生み・神生みの物語が大きく動き始めます。原典に書かれていること、後世の信仰、私が現代の生き方に重ねて読む部分を分けて見ていきましょう。
『古事記』の神名と読み
- 伊耶那岐神(いざなきのかみ)
- 妹 伊耶那美神(いも いざなみのかみ)
國學院大學の神名データベースは、『古事記』の表記を伊耶那岐神・伊耶那美神としています。一般には伊邪那岐神・伊邪那美神、また『日本書紀』系では伊弉諾尊・伊弉冉尊などの表記も広く用いられます。表記は異なっても、神世七代第七代の二柱を指します。
神世七代の最後から国生みへ
『古事記』では、伊耶那岐神と伊耶那美神を神世七代の最後の一組として数えます。その後、天つ神から国土を整える役目を受け、天の沼矛を授けられます。二柱は淤能碁呂島を成し、婚姻を経て国々と多くの神々を生みます。
ここで大切なのは、神世七代が単純な親子の家系図として記されているわけではないことです。神々の登場順と、独神から男女一対へ移る構成を示し、その最後に国生みを担う二柱が置かれています。
国生みの後に続く、死と黄泉国の物語
伊耶那美神は火の神を生んだことで神避り、伊耶那岐神は黄泉国へ迎えに行きます。しかし二柱は黄泉比良坂で別れ、伊耶那岐神は戻った後に禊を行います。そこから天照大御神・月読命・須佐之男命という三貴子の誕生へ続きます。
国生みだけを見ると夫婦和合の物語に見えますが、『古事記』は誕生、別れ、死、禊、再生という流れも語ります。二柱の物語には、始まりだけでなく、取り戻せないものを受け入れて次へ進む厳しさがあります。
伊邪那岐神・伊邪那美神のご利益(御神徳)
伊邪那岐神と伊邪那美神は、国生み・神生みを成し遂げた男女一対の神として信仰されています。二柱の神話と各神社の由緒から、主に次の御神徳が伝えられています。
- 夫婦円満・縁結び:初めて夫婦の道を始め、ともに国生みを行った二柱であることに由来します。
- 子授け・安産:多くの国土と神々を生んだ神話から、命を授かり育む信仰につながっています。
- 延命長寿・家内安全:生命の親神として、長寿や家族の平穏を願う信仰があります。特に多賀大社は延命長寿の神として知られます。
- 厄除け・禊祓い:黄泉国から戻った伊邪那岐神が禊を行った神話から、心身を清め、災いを遠ざける信仰につながっています。
これらは『古事記』本文に「ご利益一覧」として書かれているものではなく、神話の内容と各神社で長く育まれた信仰に基づく御神徳です。願いが必ず実現するという意味ではなく、参拝を通して命やご縁に感謝し、自分の歩みを整えるものとして受け止めるとよいでしょう。
伊邪那岐神・伊邪那美神を祀る著名な神社
伊弉諾神宮(兵庫県淡路市)
伊弉諾大神・伊弉冉大神の二柱を祀る、国生み神話と深い関わりを持つ神社です。境内の「夫婦の大楠」は二株が一株に結ばれた御神木で、夫婦円満、縁結び、安産・子授けの信仰を集めています。
多賀大社(滋賀県犬上郡多賀町)
伊邪那岐大神・伊邪那美大神を祀り、「お多賀さん」と親しまれる滋賀県を代表する大社です。二柱を生命の親神と仰ぎ、延命長寿、縁結び、厄除けの神様として広く信仰されています。
花窟神社(三重県熊野市)
伊弉冉尊と火の神・軻遇突智尊を祀ります。『日本書紀』に記された伊弉冉尊の御陵と伝えられ、社殿を持たず、巨岩を御神体として仰ぐ古い祭祀の姿を伝える神社です。伊邪那美神の「神々の母」としての側面と、誕生・死・命の循環を考えるうえで重要な聖地です。
江田神社(宮崎県宮崎市)
伊邪那岐尊・伊邪那美尊を祀る古社です。周辺は、黄泉国から戻った伊邪那岐神が禊を行った「筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原」の伝承地とされます。良縁を願う参拝者が訪れ、近くの禊池とともに禊祓いの神話をたどることができます。
このほかの神社と御祭神・所在地は、関連記事「伊邪那岐神・伊邪那美神を祀る代表神社」で、公式情報に基づいて詳しく整理しています。
清家龍征の読み|整えるだけでなく、役目を引き受ける
第六代までに「整う」流れがあり、第七代では二柱が実際に国を生み、神々を生みます。私はこの並びを、準備ができた後には役目を引き受け、現実に働きかける段階が来るという問いとして読みます。
仕事や暮らしでも、知識を集め、条件を整えるだけでは物事は始まりません。誰と何をつくるのか、どの役目を引き受けるのかを決め、一歩を動かす必要があります。これは原典の断定ではなく、神々の登場順から私が現代に重ねる読みです。
神世七代シリーズ完結
これで、国之常立神から伊邪那岐神・伊邪那美神まで、神世七代の七代がそろいました。天地初発から造化三神、別天神、神世七代までの流れ、登場順の系譜図、ご利益・御神徳、代表神社は、天地開闢から神世七代まで|神々の系譜・ご利益・代表神社にまとめています。
古事記を体系的に学びたい方は、講座一覧もご覧ください。

